外国人の社会保険・労働保険・法律の適用
外国人であっても日本国内で就労する限り、原則として日本人と同様、労働基準法、最低賃金法、労働安全 衛生法、労働者災害補償保険法等の労働関係法令や健康保険法、厚生年金保険法当の社会保険関係法令が、日本人と同様に適用されます。
外国人の社会保険に関する留意点
外国人についても、適用事業所に常用雇用される限り厚生年金保険・健康保険が適用になり、これに加入する必要があります。 また、常用雇用関係にない外国人についても、外国人登録を行っている者は国民年金保険と国民健康保険の適用になります。 厚生年金保険に関しては6ヶ月以上厚生年金を納めた外国人労働者で本国へ帰国された方に関しては下記のように脱退一時金を受けることが可能となります。 年金保険に加入することにより、労働者の老齢、障害死亡などの場合には、保険料から年金や手当金が支給されます。
また、日本で年金保険に加入していた外国人は1995年4月から、出国後、請求手続きをすることにより脱退一時金が受けられます。 脱退一時金は、原則として次の条件のいずれにも該当する者が、出国後2年以内に請求したときに支給されます。 脱退一時金を受けることが出来る外国人労働者が帰国する場合、帰国後に脱退一時金の支給を請求しうる旨を説明し、社会保険事務所等の関係機関の窓口を教示することが努力義務として規定されています。
1. 日本国籍を有していないこと
2. 厚生年金又は国民年金の保険料を6カ月以上納めていたこと
3. 日本に住所を有していないこと
4. 年金(障害手当金を含む。)の支給を受ける権利を有したことがないこと
外国人の雇用管理に関して
1.日本人と同等の労働条件
賃金、労働時間、求人、退職、解雇等に関する労働条件は法令に適合する日本人の従業員と同等の水準となるようにしなければなりません。特に賃金については、在留資格によって、報酬用件が課されているものがあります。「人文知識・国際業務」、「企業内転勤」、「技術」、「投資・経営」(管理者)などでは、日本人と同等額以上の報酬でなければなりません。
2.賃金体系
外国人労働者は、日本人より、“働く対価としての賃金”に非常にこだわりがあります。給与水準、給与から控除される労働保険・社会保険等の意味等の疑問に対して、分かりやすく丁寧に説明することが労働者のモチベーション維持に重要なキーとなっています。また、将来、海外子会社等の幹部として活用することを予定して採用した外国人労働者の場合、日本と現地の賃金 水準が大きく異なることがあり、現地の処遇に変更すると、トラブルなることがあります。現地帰任(赴任)後は賃金体系が変わり得ることを採用時に説明して おく必要があります。
3.キャリアパス・評価方法の明示
外国人労働者は、日本人より、“働く対価としての賃金”に非常にこだわります。給与水準、給与から控除される労働保険・社会保険等の意味等の疑問に対して、分かりやすく丁寧に説明することが労働者のモチベーション維持に重要なキーとなっています。また、将来、海外子会社等の幹部として活用することを予定して採用した外国人労働者の場合、日本と現地の賃金 水準が大きく異なることがあり、現地の処遇に変更すると、トラブルなることがあります。現地帰任(赴任)後は賃金体系が変わり得ることを採用時に説明し,理解を得ておく必要があります。
4.職場環境
異なった文化や習慣、仕事の仕方の違いを会社が受容できず、外国人労働者の環境世整備やケアが行き届かず外国人労働者が長く定着しない企業をしばしば見受けます。こうした場合、以下のような意識改革を進めることが外国人労働者の定着、活躍のためには大切となってきます。
① 国の企業文化や習慣をよく理解している日本人を外国人受け入れ職場の管理職に配置
② 従業員個人の宗教や文化を受容しフラットな職場環境にする
③ 外国人社員に 限らず社員の誰もが意見を言いやすい職場風土を作る
④ 文化・習慣の違いに対する理解の促進やコミュニケーションの活発化を通じて、受け入れ側の意識改革を進める ことが大切です。
5.安全衛生
安全教育は外国人労働者が理解できる言語を使用して行う、図解で示す等、外国人が内容を理解できる方法により行うよう努めなければなりません。また、日本人労働者同様、労働者の安全と衛生を確保するため、労働者の危険又は健康障害の防止、安全衛生教育(雇入れ時の教育等)、健康診断の実施がなされるよう労働安全衛生法で規定されています。(労働安全衛生法)診断の目的、診断結果、教育は本人が理解できる方法で説明する必要があります。
6.外国人雇用時の届出
厚生労働省は、外国人労働者の雇用管理改善のため、事業主が考慮すべき事項を示すため「外国人労働者雇用・労働条件に関する指針」を発表しています。それによると、外国人労働者を常時10人以上雇用するときは、この指針の第3項「外国人労働者の雇用および労働条件に関して考慮すべき事項」等を管理させるため、人事課長等を「外国人労働者の雇用労務責任者」として選任するものとしています。
外国人を採用する
我が国の外国人労働者の受け入れに関する基本方針は「専門的または技術的な知識や経験を必要とする分 野での活用を推進していくこと」としています。日本で就労してもらうには、就労ビザの取得が必要です。外国人労働者を採用し雇用していくには、それなりの手間と費用も掛かります。
企業・外国人労働者のいずれもが、お互いに気持ちよく業務を進めていくためには、「なぜ外国人労働者を雇用するのか」、「外国人労働者にどのような役割を期待しているのか」について、明確なビジョンを描いておくことが大切です。
外国人労働者の募集・採用のポイント
外国人労働者の募集方法としては以下が挙げられます。外国人の場合、外国人同士のネットワークが発達しているため、その紹介と言う例が多くみられます。募集対象人材の能力・技術・人物像を明確に、且つ予算を考慮した上で一番、会社に適した方法を取ることです。
①自社のホームページ、求人雑誌等
②従業員、取引先、大学等からの紹介
③公的機関や民間職業紹介会社からの紹介
④国内・海外ジョブフェアの開催、コンサルティング会社へ依頼してのヘッドハンティング
④の民間職業紹介会社に関する留意点として注意しなければならないことは、その紹介業者が厚生労働省の認可を受けているか確認することです。最近、違法な紹介業者が横行しています。外国人の給料に対して違法に中間搾取をしている紹介業者も少なくないようです。こういった紹介業者を利用してしまった場合には事業主にも罰則が課せられますので十分ご注意下さい。
採用条件は誤解されないためにも明確に提示することが重要です。必要な能力・経験など、どの程度のレベルなのか出来るだけ具体的に明記することをお勧めいたします。
※参考:不法就労助長罪(入管法第73条の2第1項): 300万円以下の 罰金、営利目的の場合は、1年以上10年以下の懲役及び1,000 万円以下の罰金。
条件として以下のようなものは禁止または望ましくないとされています。
× 男女差別
× 年齢制限
× 国籍による差別 ※その場合、「欧米人限定」「黒人は不可」など、国籍や人種による差別は禁じられているので注意してください。 ただし「TOEIC700点以上の方優遇」、「日本語が堪能な方を求む」という、個人の能力に関する表現は合理的差別として認められています。
× 虚偽広告、誇大広告
× 有害業務(公衆衛生または公衆道徳上有害な業務 - 性風俗産業)
IT技術者を中心とするエンジニアの採用では、能力・技術が重要になってきます。日本はインド、シンガポール、韓国、中国、フィリピン、タイ、ベトナムおよびミャンマーの8カ国との間でそれぞれIT技術者の相互認証を行っています。
国内にいる外国人を採用する時
(1) 在留期間・在留資格を確認しましょう。
外国人(日本国籍を有しない者をいいます。ただし、永住者や特別永住者は除きます。)が日本で就労するためには、①就労可能な「在留資格」を保有していること(海外から外国人を採用する場合には、就労可能な「在留資格」を保有すること)、②在留期間が「有効であることが必要になります。
そこで、国内にいる外国人を採用する場合、以下のいずれかの方法で「在留資格」と「在留期間」を確認することが出来ます。
1.旅券(パスポート)の上陸許可認印: 上陸許可年月日、在留資格、在留期間が記載されています。最新のものを確認して下さい。
2.外国人登録証明書: 外国人が90日以上日本に滞在するときには、市区町村に届か出て外国人登録を行う義務があり、外国人登録証明書を常に携帯していなければなません。在留資格の変更や在留期間の更新を行っている場合は、その旨が裏面に記載されています。
3.就労資格証明書: 入管法第19条の2に定める就労資格証明書とは、就労が認められている活動の内容を証するものとして、本人が申請した場合に交付されます。留学生などの「資格外活動許可」に対しても発行される証明書なので、不法就労のチェックには大変有効です。
不法就労の外国人を雇い入れてはいけません!
不法就労者(不法入国者、不法残留者などの違法在留者、「留学」、「就学」や「家族滞在」など就労が認められない在留資格で資格外活動許可を受けずに就労活動を行う者)を雇用した場合、企業は入管法の「不法就労助長罪」に問われ、処罰されます。(3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金)。不就労者であることを知らなかったなら、罰せられることはありませんが、雇用主ならば知っていたと認定される危険性があります。就労することができる外国人かどうかよく確認して採用しなければなりません。
(2) 国内にいる外国人を新卒採用する。
日本に留学している留学生を新卒で採用する場合、在留しく変更の手続きが必要になります。「留学」から「技術」「人文知識・国際業務」等、就労可能な在留資格へ変更しなければなりません。原則として留学生本人が、最寄りの地方入国管理局などに出向いて行うことになります。変更が許可されるまでに1~2ヶ月ほどかかります。
(3) 国内にいる外国人を中途採用する。
1.在留資格変更不要の場合
外国人を、日本における前職と同一の在留資格に属する職種で中途採用する場合、手続きは不要です。ただし、在留期間更新の手続きの際、新たな事業所に係る関係書類を提出しなければなりません。在留資格更新の手続きをより手早く簡素化させるには採用時点において、入国管理局から「就労資格証明書」の交付を受けておくことをお勧めいたします。
2.在留資格変更が必要の場合
外国人を前職と別の在留資格に属する職種に就かせる場合は、在留資格変更の手続きを行い、許可を得てください。これは同一会社内の異動であっても、同様の手続きが必要です。 この在留資格変更は提出した文書により在留資格の変更を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り、許可することが出来る、つまり、法務大臣の自由裁量のもとにその許否が判断されるものです。
※在留期間更新についても同様です。
(4) 留学生をアルバイトとして雇用する。
留学生は法務大臣の資格活動許可を受けた場合、アルバイトを行うことが可能です。従って許可を受けている場合はアルバイトとして雇用することが可能となります。
事業主はアルバイトとして留学生を雇用する際に留学生が法務大臣から受けた「資格外活動許可書」を確認しましょう。 資格外活用許可の内容は風俗営業又は風俗に関係する職業でないことが前提となっています。なお、資格外活動の許可を受けずにアルバイトに従事した場合は、不法就労となりますので注意する必要があります。
< 留学生・就学生のアルバイト時間一覧 >
留学生 :教育機関が長期休業中の時は1日8時間以内で労働可能。
1. | 正規生 | 28時間/1週間 |
2. | 聴講生・研究生 | 14時間/1週間 |
3. | 専門学校の学生 | 28時間/1週間 |
4. | 就学生 | 4時間/1日(長期休業中含む) |
(5) 「家族滞在ビザ」で日本に来ている外国人をアルバイトとして雇用する。
外国人が本国から家族を呼び寄せたい場合、外国人の住むエリアの入管管理局にて「家族滞在ビザ」の認定申請をします。「家族滞在ビザ」の認定証明書が下りたらご家族本人が本国の日本大使館、又は領事館にてビザを受け取れば日本に入国することが出来ます。 「家族滞在」とは、日本で在留資格を持って在留する外国人の扶養を受ける配偶者、また子供のことです。活動範囲は日常的な活動に限定されるので、原則として就労活動は出来ません。が資格外活動許可証を受ければ、当然アルバイトやパートで働くことができるのです。
海外にいる外国人を採用する時
海外にいる外国人を採用する場合は、その外国人が、外国にある日本の大使館や領事館等の在外公館から、ビザの発給を受けなければなりません。日本で行う業務内容に応じたビザを取得するのですが、在留資格には27種類あり、それぞれ行うことが可能な業務の範囲と在留資格取得要件があります。この27種類の資格に当てはまらない場合は日本への就労は出来ません。
仕事内容に合う在留資格が決定したら、呼び寄せる外国人の学歴、職歴が申請しようとしている在留資格の要件に合致しているか確認してください。
その後、最寄りの入国管理局で在留資格認定証明書交付申請を行います。
この場合、日本に情報の照会を行うため、審査に時間がかかり、数ヶ月を要します。事前に、本人または代理人の申請により、日本国内で法務大臣から「在留資格認定証明書」 の交付を受けておくと、日本に照会する時間が短縮され、比較的スムーズにビザがおります。
外国人労働者が日本で暮らすための配慮
外国人労働者が日本で暮らすには文化や宗教の違いはもちろんのこと様々な苦労があります。彼らに仕事で本来の能力を発揮してもらうためには、会社でも生活面のサポートをする必要があります。
住宅
外 国人が個人として住居を借りるには、「外国人だから」という理由で断られ、困難を生じることがあります。社宅や寮が利用できなければ、会社名義で賃貸契約 (いわゆる借り上げ社宅)するなどのサポートが必要です。
入国管理手続きのサポート
外国人労働者は一定の期間ごとに在留期間の更新が必要です。必要書類の作成、または会社で手続きを代行するとか、専門業者に委託をするなどの配慮が必要です。また、出入国管理の手続きや在留資格の変更・更新のための時間がとれるように特別休暇を付与するなど考慮してあげてください。
外国人労働者のために生活環境を整えてあげましょう。
外国人労働者は、日本の生活習慣に慣れていないため、職場や地域において双方の誤解から思わぬトラブルが起 きる可能性があります。そのため、職場などでの円滑な人間関係を作り上げることを積極的に援助するため、雇い入れた段階で日本の生活習慣などについて理解させておくことが必要です。
外国人労働者について適切な宿泊施設を確保するように努めるほか、給食、医療、教養、文化、体育、レクリエーション等の施設の利用について、外国人労働者にも十分な機会が保障されるように努めてください。
外国人労働者を雇用する場合には、宿泊施設の確保が不可欠です。同居させる場合でも、一人あたりの居住面積を十分に確保するように努めてください。 外国人労働者に家族がいる場合、その家族が日本の生活になれるよう、会社としてもできる限りの配慮を心がけましょう。また、本人のみならず家族をも含めた生活サポートに留意することが大切です。外国人労働者の子供のため、学校の手続きを代行するなど、外国人労働者の子どもが将来の日本社会あるいは母国社会を支える存在となることを考慮し、子どもの社会的自立を図るため、外国人労働者が保護者としての責任を果たすことができるよう配慮が必要です。
外国人労働者は一定の期間ごとに在留期間の更新が必要です。必要書類の作成、または会社で手続きを代行するとか、専門業者に委託をするなどの配慮が必要です。また、出入国管理の手続きや在留資格の変更・更新のための時間がとれるように特別休暇を付与するなど考慮してあげてください。
外国人労働者が10人以上になったら外国人労働者雇用労務責任者の選任が必要です。
厚生労働省は外国人労働者が10人以上になった場合、外国人雇用労働責任者の選任を義務付けています。雇用労務責任者は、外国人労働者の雇用や労働条件等に関する事項についての管理や、関係行政機関との連絡など、外国人労働者の雇用労務管理を担当することを職務とします。原則として人事課長、労務課長など各事業所の 管理職の中から選任してください。